弁護士のブログ~中小企業のための町医者法律事務所~

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2017年 11月 02日

懲戒処分に関するよくあるご質問

今回は、懲戒処分に関するよくあるご質問に対する回答をご紹介したいと思います。

.ある社員に懲戒処分を課したいと思っています。気を付けるべき点を教えてください。

.まず、就業規則に書いてある懲戒事由と懲戒処分の内容(けん責、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇等)を確認してください。懲戒権行使のためには就業規則に懲戒規定があることとその周知が必要となります。次に、本人に対して弁明の機会の付与、つまり当該社員の言い分を聴く場を設ける必要があります。また、どのような処分を課すかを決めるに当たっては、非違行為の内容と処分の重さのバランスが取れているかどうかを検討しておく必要があります。

.社員がセクハラ行為をしました。当社の就業規則ではセクハラ行為をしたことを懲戒事由として定めていませんでしたが、今回新たにセクハラ行為を懲戒事由に加えて当該社員に懲戒処分を課したいと思います。

.懲戒処分を課す場合には、新たに設けた懲戒規定を遡ってそれ以前の行為に適用することはできません。

.懲戒処分を課すにあたり、事前に当該社員に会社へ出頭し言い分を述べるよう通知しました。しかし、その社員は予定した日に出社せず聴き取りができませんでした。このまま懲戒処分を課してもよいのでしょうか。

.会社が懲戒処分の対象となる社員に対し、その弁明を聴く期日を予め書面で連絡したにもかかわらず、当該社員が正当な理由もなくこれに応じない場合には、弁明の機会を自ら放棄したものとみなして懲戒手続をすすめる場合があります。

.ある社員に対し懲戒解雇を検討していたところ、その社員が辞職してしまいました。退職後でも懲戒解雇することはできますか。

.社員が辞職の意思表示をし、退職の効力が発生した後(辞職の意思表示から2週間経過後、月給制の場合は賃金計算期間の前半に申し出たときに次期の初日に効力が発生します)は、もはや懲戒解雇することはできなくなります。したがって、会社としては懲戒解雇に相当する非違行為が疑われる場合には速やかに事実調査を行い、弁明の機会を与えて手続を進める必要があります。

以上


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# by tenma-lo | 2017-11-02 17:02 | 労働
2017年 10月 02日

「働き方改革」を考える~その2(罰則付き時間外労働の上限規制)

この新しい上限規制は、業種、企業によっては、大変厳しい内容だと思います。

ただ、従来は、いわゆる「時間外限度基準告示」が有効に機能せずにきたことにより長時間労働が蔓延し、過労死や過労自殺などの労災が減らない状況が続いてきたことは事実だと思います。

したがって、今回の法改正は、そうした状況を罰則付きの法律により実効的に規制してゆこうとするものとして、使用者側としても法改正を正面から受け止めて、実行する手立てを具体化しなければならないと思います。

労働側からは、今回の法改正は、特に、特例措置で、ほぼ労災認定基準と同じ時間まで時間外労働を認めている点が厳しく批判されています。

確かに、この点は、労働側、使用者側が歩み寄った妥協の産物ということができるのかもしれませんが、労制審でも強調され、また、改正案でも明記されているように、厚労省は指針を定めて、労働時間の延長をできる限り短くするよう努力することや行政官庁に必要な助言、指導を行える権限を与えることになっていますから、その権限の適正な行使を期待したいと思います。

ただ、企業、業種によっては、人手不足が深刻であったり、発注元や消費者の皆さんの協力や理解が不可欠といった実情があるのも事実です。中小企業では、特に難しい実情があります。

その問題を解決するには、企業の自助努力が重要なのはもちろんですが、すでに運輸など一部業界では行われているように、発注元の業界団体との協議会を行政が主催するなど、行政の積極的なバックアップを是非望みたいと思います。


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# by tenma-lo | 2017-10-02 01:10
2017年 10月 02日

「働き方改革」を考える~その2(罰則付き時間外労働の上限規制)

(時間外労働の罰則付き上限規制の内容)

まず、今回の上限規制案の内容の骨子を紹介します。

【週40時間を超えて労働可能な時間外労働の限度】

≪原則≫週45時間かつ年360時間以内。違反には罰則。

≪特例≫臨時的な特別の事情がある場合として労使が合意して労使協定を結ぶ場合。

但し、以下の労使の合意によっても上回ることのできない上限規制(()()を両方満たす必要。)。

()720時間(月平均60時間)

()720時間以内で、一時的に事務量が増加する場合であっても、下記の上限規制。

 ①2か月、3か月、4か月、5か月、6か月の平均でいずれにおいても、80時以内(休日労働を含む)

 ②単月では、100時間未満(休日労働を含む)

 ③上記原則(週45時間かつ年360時間)を上回る特例の適用は年6回が上限。

≪適用の猶予、除外≫

()自動車の運転業務(現行は大臣告示の適用除外)

 ⇒適用猶予

   改正法の一般則の施行期日の5年後に、年960時間(月平均80時間)以内の規制を適用。

   将来的に一般則の適用を目指す。 

()建設事業(現行は適用除外)

 ⇒適用猶予

   改正法の一般則の施行期日の5年後に、一般則を適用(但し、復旧・復興は別)。

()新技術、新商品等の研究開発の業務(現行は適用除外)

 ⇒医師の面接指導、代替休暇の付与など実効性のある健康確保措置を課すことを前提に、対象を明確化したうえで適用除外。


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# by tenma-lo | 2017-10-02 01:07
2017年 09月 29日

医療法人社団Y事件(最高裁平成29年7月7日判決)

はじめに
 今回は、高額な年俸が支払われていた医師について、年俸に割増賃金相当額が含まれているとはいえないと判断された医療法人社団
Y事件(最高裁平成29年7月7日判決)についてご紹介します。

1 事案の概要

本件は、医療法人であるYに雇用されていた医師であるXが、Yに対し、割増賃金等の支払いを求めた事案です。

XY間では、基本給86万円、役付手当3万円、職務手当15万円、調整手当16万1000円を合計した月額給与120万1000円に基本給3か月分の賞与等を加え、年俸契約額を1700万円とする雇用契約が締結されていました。

Xは、週5日の勤務とし、1日の所定勤務時間は、午前8時30分から午後5時30分まで(休憩1時間)を基本とするが、業務上の必要がある場合には、これ以外の時間帯でも勤務しなければならず、その場合における時間外勤務に対する給与については、Yの本件時間外規程に定めによるとされていました。

本件時間外規程によれば、時間外手当の対象業務は、原則として、必要不可欠な緊急業務等に限られ、その対象時間は、勤務日の午後9時から翌日の午前8時30分までの間に発生する緊急業務に要した時間等であり、通常業務の延長とみなされる時間外業務は、時間外手当の対象とならない旨定められていました。

本件雇用契約においては、本件時間外規程に基づき支払われるもの以外の時間外労働等に対する割増賃金について、年俸1700万円に含まれることが合意されていましたが(以下では、「本件合意」といいます。)、上記年俸のうち時間外労働等に対する割増賃金に当たる部分は明らかにされていませんでした。

2 判決の概要

 ⑴一般論

割増賃金をあらかじめ基本給や諸手当に含める方法で支払う場合においては、労働契約における基本給等の定めにつき、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分を判別することができることが必要であり、上記割増賃金に当たる部分の金額が労働基準法37条等に定められた方法により算定された割増賃金の額を下回るときは、使用者がその差額を労働者に対して支払う義務を負うというべきである。

 ⑵あてはめ

  XYとの間においては、本件時間外規程に基づき支払われるもの以外の時間外労働等に対する割増賃金を年俸1700万円に含める旨の本件合意がされていたものの、このうち時間外労働等に対する割増賃金に当たる部分は明らかにされていなかった。そうすると、本件合意によっては、Xに支払われた賃金のうち時間外労働等に対する割増賃金として支払われた金額を確定することができないのであり、Xに支払われた年俸について、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することはできない。

  したがって、YXに対する年俸の支払いにより、Xの時間外労働及び深夜労働に対する割増賃金が支払われたということはできない。

3 解説

本件の控訴審判決(東京高裁平成27年10月7日判決)では、本件合意は、Xの医師としての業務の性質に照らして合理性があり、Xの労務の提供について自らの裁量で律することができたことやXの給与額が相当高額であったこと等からも、労働者としての保護に欠けるおそれはなく、Xの月額給与のうち割増賃金に当たる部分を判別することができないからといって不都合はないと判断されたのに対し、本判決では、高額な給与額について触れることなく、基本給等の定めについて、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することができないため、年俸の支払いにより、割増賃金が支払われたということはできないと判断されました。固定残業代制度を導入しておられるお会社におかれましては、「通常の労働時間の賃金に当たる部分」と「割増賃金に当たる部分」とが明確に区分できているか、今一度ご確認いただく必要があるかと存じます。

以上


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# by tenma-lo | 2017-09-29 16:26 | 労働
2017年 09月 17日

「働き方改革」を考える(番外編)

【日本郵便事件東京地裁平成29914日判決】について

東京地裁は、日本郵便の有期雇用労働者について、労働条件の一部が、無期雇用の正社員と比較して不利益なのは不合理であるとして、損害賠償を命じる判決を出しました。

まだ、判決文が公表されていないので、詳細は分りませんが、報道によると、判決は、有期雇用社員と正社員の間には、その職務の内容等(担当業務の範囲及び配置転換の有無等)に大きな違いがあることから、賞与、早出・夜勤の手当に相違があるのは不合理とはいえないが、年賀状の配達の業務に対して正社員に支払われる「年末年始勤務手当」及び賃貸住宅に住む正社員にのみ支払われる「住宅手当」について、有期雇用社員に支払わないのは、当該手当の目的、性格に照らして不合理と判断しました。そして、「年末年始勤務手当」については8割、「住宅手当」については6割に相当する損害賠償金の支払を命じました。

また、「病気休暇」、「夏期冬期休暇」についても、前者は労働者の健康維持のための制度であり、後者は国民意識や慣習が背景にある制度であるとして、有期雇用社員に与えないのは不合理であるとしました。

また、不合理性の有無を判断するに際し、正社員の中でも、担当業務や異動の範囲が有期契約社員と似ている一般職の労働者の労働条件と比較して、不合理といえるか否かを判断した点にも特徴があります。

この判決は、ハマキョウレックス事件の大阪高裁判決と同じく、個々の待遇毎に、その不合理性の有無を判断しており、同一労働同一賃金ガイドライン案や法律案要綱の内容とも符合する判断です。

一方、判決が、長期雇用に対するインセンティブや有為の人材の確保といった理由で、正社員と待遇、手当額の相違を認めたのは、ガイドライン案が、「将来の役割期待が異なるため」といった抽象的・主観的な説明では足らず、職務内容、職務内容や配置の変更の範囲、その他の事情の具体的実態に基づき判断すべきとしていることとは異なった考え方を明らかにしています。賞与について、不合理な相違と認めなかったことも、ガイドライン案の示す考え方とは異なります。

いずれにしても、控訴される予定なので、高等裁判所の判断が注目されるところです。

なお、本判決は、正社員と同様の賃金その他の待遇を受ける地位の確認請求を認めませんでしたが、長澤運輸事件の就業規則のような定め方をしていない限り、地位確認請求を認めないのは多数説といってよいでしょう。
(吉田肇)


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# by tenma-lo | 2017-09-17 12:51 | 労働