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個人事業主と労働組合 その4~個人事業主に労基法の労働時間・休日、残業代等の規制は適用されるのか~

 その1でご紹介した新国立劇場運営財団事件、メンテナンス事件判決は、通常の労働者に比較すると自由度の高い労働者だったことから会社と労組が厳しく対立し、最高裁の判断が注目されていました。
 同時に、今回の判決では触れられていませんが、隠れた重要問題がありました。それは、これらの個人事業主に対して、労働時間や残業代、解雇、労災責任などに関する労働法の規制が適用されるのかという点です。
 少し複雑ですが、裁判所は、その2で紹介したような

緩和された「使用従属関係」が認められるにとどまる場合は「労基法上の労働者」には当たらず、上記の労働法の規制が原則として適用されない

としています。新国立劇場運営財団事件の合唱団員について、最高裁は、今回「労組法上の労働者」には当たるとしましたが、別の判決では「労基法上の労働者」には当たらないとしました。この場合、団体交渉には応じて労働条件等について話し合いをしなければならないが、賃金や労働時間、解雇等の労働条件について労基法の厳格な規制は適用されません。
 しかし、使用者側としては、最高裁判決が出された以上、労組法上も労基法上も労働者性が問題にされないように委託契約の内容やその締結方法等を整備するとともに、業務遂行の実情を改善する必要があります。

 たとえ個人事業主の形をとっていても、強い「使用従属関係」が認められる場合には、労働基準法等の規制が適用される可能性があります。

 上記判決が出て以降、新聞などで「経営者は個人事業主に真摯に向き合え」などと、事業主との団交に応じるよう求める論調が見受けられます。
確かに、中には通常の労働者と同じ働き方をさせながら労働時間や残業代などの労働法の規制を回避するために委託契約を形式的に結んでいる例もあり、そのような場合に労働組合と団体交渉を命じられるのはやむを得ないでしょう。団体交渉で適切な解決を目指さざるを得ません。
 しかし、このような判決が出ると、拡大解釈をして濫用する動きも懸念され、既に紹介したフランチャイズの加盟店(フランチャイジー)経営者や従業員を抱えている下請先が、契約条件に不満を持って労組を結成する例も増加する可能性があります。会社としては、上記のような対策を事前に講じるとともに、適正な契約関係を作る必要があります。
by tenma-lo | 2011-08-29 11:54