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納期とノルマで裁量労働を否定

京都地裁で、先日専門職型裁量労働制について、注目すべき判決が出た。まだ新聞報道で知る限りだが、コンピューターソフトの設計に携わるシステムエンジニアを裁量労働制の適用対象業務としつつ、納期とノルマを課されていたことを理由にこの労働者については裁量労働制の適用を否定したという。この会社は、8時間のみなし労働時間(8時間を超える時間外労働をした日があっても、8時間労働とみなす)を採用していたが、裁量労働制の適用を否定されたために、1135万円の残業代支払いを命じられた。
 確かに、本来、専門職型裁量労働は、業務の専門性のゆえに、業務の遂行方法を労働者の裁量に大幅に委ねざるを得ないため、使用者が業務の遂行手段や時間配分を具体的に指示しないことが予定されている。したがって、厳しいノルマや納期が命じられていたため、業務遂行手段や時間配分に裁量の余地がなかったのであれば、裁量労働制が本来予定している場面ではないともいえよう。
 しかし、まだ余り論じられていない問題ではあるが、業務遂行手段や時間配分について具体的な指示がなされており、裁量の余地が少なかった場合であっても、それは、単にその具体的な業務上の指示が無効となるだけであり、裁量労働制の適用そのものが無効となるわけではないという意見も有力に主張されている。
 裁量労働制の趣旨からすれば、事案によっては京都地裁のような判断もありうるが、たとえ裁量労働といえども、目標を設定したり、仕事の納期を決めるのは事業を行う上で必要なことだ。いずれにせよ実務に重大な影響を与える問題なので、今後の裁判例の集積が待たれる。
 同時に、我々実務家としては、京都地裁のような判断がされるリスクを織り込んで、現場では裁量労働制の設計及び運用のアドバイスをする必要がある。
by tenma-lo | 2011-11-03 01:01