1 ある問題社員
精神科医師の講演の後の質疑でこんなやり取りがあった。会社の総務担当社員の質問。パーソナル障害(人格障害)と思われる社員が、職場で周囲の社員と様々なトラブルを引き起こしているにもかかわらず、当該社員は、周囲の人間に問題があるのであって、自分には一切責任がないと主張している。どう対応すればよいか。
ある社員は、職場のトラブルについて、総務の担当者が事情を聴きたいと メールすると、自分の貴重な時間を奪われることになるので、聞きたいことがあれば、メールで聞けと返信し、会おうとしないという。
自己愛型人格障害というそうだが、うつ病などの精神病と異なり、人格障害は病気ではないので、治療法はないという。もちろん、本人に病識はない。その医師は、そのような人として対応するしかないと話す。
2 どう対応すべきか
この種、人格障害と呼ばれるケースでは、会社が毅然とした態度で、適切な対応を行わないと、要求がどんどんエスカレートし、対応する担当者が疲弊し、悪くすると、ノイローゼ、精神疾患にかかってしまうこともある。
このような社員に対しては、ルール(規範)を明示して限界を設定(limit setting)することが重要だと思う。先の医師も同様のことを言っていた。
その上で、ルールを守れないようであれば、その都度注意、指導し、改善の機会を与えて、その結果を記録しておく。それでも態度が改まらないようであれば、適切な時期にしかるべき処分をすることになるだろう。
3 適正な手続きを尽くすことが大切(due process)
こうした対応は、処分の効力が争われる事態も想定して、できるだけ客観的で具体的な証拠を収集しなければならないが、トラブルの発生に耐えながらそれを実行することは、現場の社員にとって大きな負担となることもある。
しかし、手続を尽くして、その過程と結論を証拠として提出すれば、裁判所を説得することは可能なので、そこは耐えてほしい。
ただ、裁判で決着をつけるには、多くの時間と労力を要することになる。そこで、裁判にトライする前に、退職勧奨を慎重かつ丁寧に実施することになる。退職金や雇用保険受給を迅速にできるための配慮の他に、最近では、再就職支援のサービスも徐々に充実してきた(助成金の対象も拡大している)ので、利用することも少なくない。
いずれにせよ、適切な指導、証拠の収集とともに、退職勧奨を適切な時期と内容で行うことが肝要だ。指導、改善の機会付与と証拠の収集が一定進めば、退職勧奨で相手が受け入れる可能性も高まる(それを全く意に介さない者もいるが、それはそれで対応する)。
現場の担当者の苦労は察するに余りあるが、適正な手続きを踏んで問題社員に対応することは、当該社員の問題を解決するためだけではなく、周囲の社員も会社の対応を見ているので、人事マネージメント全体をうまく進める観点からも必要な労力、時間と考えてほしい。
(吉田 肇)
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