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5月29日(日) 日本労働法学会

5月29日(日)に同志社大学で開催された日本労働法学会に行ってきました。
日本労働法学会とは、労働法の研究を目的とした団体で、労働法学の大学研究者(大学教授等)、労働法を専門にしている実務家(弁護士、社会保険労務士等)等の会員で構成されています。毎年二回、報告担当の会員がそれぞれのテーマにしたがって報告する機会があるのですが、そこでは労働法に関する最先端の研究が報告されます。当事務所の重点専門分野は労働法ですので、事務所全体で報告を聞くために学会には参加するようにしています。

5月29日の労働法学会においても多数の報告がなされましたが、その中で最も私の印象に残っているのは、「労働法における学説の役割」という題で西谷敏先生がされた報告でした。西谷先生は、著名な労働法学者であり書籍も多数書かれています。

西谷先生の報告された内容を私なりに簡単にまとめますと「従前の最高裁判所の判例や学説の多数説を前提に、それを整理し、体系化することは、重要なことではある。しかし、最高裁判例及び多数説を所与の前提として法律のように扱うべきではない。近頃の、労働法学における学説には、通説や最高裁判所の判例を前提にしているものが非常に多く見受けられる。通説や最高裁判例に対する批判的な検討なくして、今後の労働法学の発展はありえない。」というものでした。

西谷先生の学説は、少数説であることが多いですが非常に有力です。西谷先生が少数説に立たれることが多いのは、従来の議論への批判的な検討の結果であり、その立場が少数説ながら有力であるのは、その批判的な検討が、日々なされることにより深化された結果であったのだと感じました。
西谷先生は主に学者の方を念頭に置かれてこのようなことを話されておりましたが、弁護士である私も、耳が痛かったです。

弁護士は、実務家です。最高裁判例、学説多数説、裁判例、行政通達等を前提にして、どのような対応をするのが適切なのか、よりリスクが少ないのかということを考えるのが一番の仕事です。私も、そのことを心がけて仕事をしています。実務の世界が、判例や行政通達等を前提にしている以上、当然のことですし、それを前提に仕事をすることは間違いではないと思います。

ただ、そのように仕事をしていますと、最高裁判例、学説多数説、裁判例、行政通達等について、批判的な観点で検討することがおろそかになってしまいます。それらを無批判に受け入れて正しいものとして、考えていたかもしれません。思考停止はよくありません。法律の世界は未知の問題を解決しなければならないことも多くあり、その時には普段からの批判的な検討が役に立つはずです。西谷先生の報告を聞いて、批判的な検討にも力を入れようと決意しました。
by tenma-lo | 2016-06-07 11:00 | その他