~中小企業のための町医者法律事務所~

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「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会報告書」(平成30年3月)のご紹介

はじめに

今回は、平成30年3月に出された「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会報告書」を一部ご紹介いたします。

1 パワーハラスメントの現状

  都道府県労働局における職場のいじめ・嫌がらせに関する相談は増加傾向にあり、平成24年度以降、全ての相談の種別の中でトップとなっています(平成28年度は全体の相談件数の22.8%を占めています)。嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けたことによる精神障害の労災認定件数も増加傾向にあります。

  厚生労働省が実施した「平成28年度職場のパワーハラスメントに関する実態調査」(以下、「実態調査」といいます。)の結果によると、従業員向けの相談窓口で従業員から相談されたテーマのうちパワーハラスメントが32.4%と最も多く、過去3年間に1件以上パワーハラスメントに該当する相談を受けたと回答した企業は36.3%、過去3年間にパワーハラスメントを受けたことがあると回答した従業員は、32.5%にものぼります。

  実態調査の結果によると、パワーハラスメントの予防・解決に向けた取り組を実施している企業は52.2%となっていますが、規模別にみると、従業員1000人以上の企業の実施率が88.4%である一方、従業員99人以下の企業の実施率は26.0%と、企業規模が小さくなると実施率も低くなっています。

  このように、パワーハラスメントの問題は社会的な問題となっている一方で、中小企業では十分な対策が行われていないのが実情となっています。


2 職場のパワーハラスメントの概念

  職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場の優位性(※1)を背景に、業務の適正な範囲(※2)を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう。

  ※1 上司から部下に行われるものだけではなく、先輩・後輩間や同僚間などの様々な優位性を背景に行われるものも含まれる。

  ※2 個人の受け取り方によっては、業務上必要な指示や注意・指導を不満に感じたりする場合でも、これらが業務上の適正な範囲で行われている場合には、パワーハラスメントには当たらない。

  職場のパワーハラスメントの行為類型としては、以下の6つの類型が挙げられています(これら以外の行為は問題ないという趣旨ではない旨留保されています)。

 ⅰ 暴行・傷害(身体的な攻撃)

 ⅱ 脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)

 ⅲ 隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)

 ⅳ 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)

 ⅴ 業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)

 ⅵ 私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)


3 事業主が講ずる対応策として考えられるもの

 ①事業主の方針等の明確化、周知・啓発

 ・社内報、HP等にパワーハラスメントの内容、パワーハラスメントがあってはならない旨の方針を記載し配布

 ・研修、講習の実施等

 ・就業規則等において、パワーハラスメントを行った者に対する懲戒規定を定める等

 ②相談等に適切に対応するために必要な体制の整備

 ・相談窓口の設置

 ・相談窓口の担当者が相談を受けた場合、留意点などを記載したマニュアルに基づき対応すること等

 ③事後の迅速・適切な対応

 ・事実関係の迅速・正確な確認

 ・被害者と行為者を引き離すための配転等

 ④上記の対応と併せて行う対応

 ・相談者・行為者等のプライバシーの保護

 ・労働者が職場のパワーハラスメントに関し相談をしたことや事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取り扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知すること


4 ご案内

  パワーハラスメントの具体例、発生時の対応策、予防策等については、7月18日(水)開催の弊所のセミナーでも紹介させていただく予定ですので、是非ご参加いただけたらと思います。

以 上



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# by tenma-lo | 2018-06-04 12:08 | 労働

ペットと慰謝料について

はじめに

 犬や猫といったペットが交通事故で死傷した場合に、飼い主に慰謝料が認められるのか。

今回は、ペットと慰謝料について法的に検討をしてみます。



1.物的損害と慰謝料

ペットが死傷した場合、発生する損害の種類は物的な損害です。自動車の修理が必要となった、所有物が毀損されたというように物に損害が生じた場合にその損害を物的損害といいますが、ペットが死傷した場合もこれらと同様に物的損害とされています。他方で、人が怪我を負った、死亡したという場合は、人に関する損害ですので人的損害といいます。

人的損害については、入通院日数や後遺症が発生すればそれに応じて慰謝料が認められます。一方で、物的損害については、財産上の損害が賠償されれば(例えば、自動車の修理費が支払われる、毀損された物が弁償される等)、それと同時に精神的苦痛も慰謝されたと考えられるため、別途慰謝料を認めることができないとされるのが一般的です。もっとも、ペットについては、特別の主観的・精神的価値を有し、財産的損害の賠償を認めただけでは償い得ないほど甚大な精神的苦痛を被った場合には、例外的に慰謝料が認められるとする裁判例が多く、近時の裁判例でも同様の傾向です。


2.ペットについて慰謝料を認めた裁判例

平成20年9月30日名古屋高裁判決では、ペットに関する慰謝料について、「飼い主との間の交流を通じて,家族の一員であるかのように,飼い主にとってかけがえのない存在になっている」「動物が不法行為により重い傷害を負ったことにより,死亡した場合に近い精神的苦痛を飼い主が受けたときには,飼い主のかかる精神的苦痛は,主観的な感情にとどまらず,社会通念上,合理的な一般人の被る精神的な損害であるということができ」る旨判示したうえで、第二腰椎圧迫骨折に伴う後肢麻痺の傷害を負った飼い犬について、飼い主との交流を通じて家族の一員であるかのように、かけがえのない存在になっていたと認定し、飼い犬の負傷の内容や程度、飼い主らの介護の内容程度等を考慮して、飼い主二名に対しそれぞれ20万円、合計40万円の慰謝料を認めています。

 当該事案はペットが死亡していない事案であるにもかかわらず、40万円とかなり高額な慰謝料をみとめた点で特殊です。特殊ゆえに、他の事案でも同様の結論になるとは限りませんが、どのような場合に慰謝料が認められるのかを考えるにあたっては参考になります。


3.ペット以外の物的損害についての慰謝料

 前述のように、ペット以外の物的損害についての慰謝料は、基本的に認められないことに注意が必要です。例えば自動車が廃車になってしまった場合の慰謝料ですが、自動車への思い入れが大きくとも、慰謝料は基本的には認められません。

以 上



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# by tenma-lo | 2018-05-08 14:39 | その他

近年の育児・介護休業法の改正について

はじめに

 昨年10月1日より、改正育児・介護休業法が施行されています。同法については、一昨年(平成28年)にも法改正がありましたので、両改正の概要を併せてご紹介させていただきます。


1 平成28年改正法の概要(施行日:平成29年1月1日)

(1) 育児関係

  ① 子の看護休暇につき、半日単位の取得を認めた

  ② 有期契約労働者の育児休業の取得要件を緩和した

(2) 介護関係

① 介護休業につき、分割取得を認めた(対象家族1人につき、3回を上限として、通算93日まで分割取得可能)

  ② 介護休暇につき、半日単位の取得を認めた

  ③ 介護のための所定労働時間の短縮措置等につき、介護休業とは別に、利用開始から3年の間で2回以上利用可能とした(従前は介護休業と通算して93日の範囲内でのみ利用可能とされていた)

  ④ 介護のための所定外労働の免除の制度を新設した

  ⑤ 有期契約労働者の介護休業の取得要件を緩和した

  ⑥ 介護休業等の対象家族の範囲を拡大した(従前は祖父母、兄弟姉妹及び孫については「同居かつ扶養している」者に限定されていたが、その限定が外され、同居・扶養していない祖父母等についても対象となった)【省令】

(3) 育児・介護両方に関わるもの

  妊娠・出産・育児休業・介護休業等を理由とする、上司・同僚による就業環境を害する行為を防止するため、相談対応体制の整備等の雇用管理上必要な措置を講ずることが事業主に義務付けられた


2 平成29年改正法の概要(施行日:平成29年10月1日)

(1) 育児関係

  ① 一定の要件を満たす場合に、最長2歳までの育児休業の取得を認めた

   具体的には、16か月までの育児休業の取得が認められるための要件と同様、

   ⅰ 従業員又は配偶者が、その子の16か月到達日において育児休業しており、かつ

    ⅱ 保育所等に入所を希望しているが入所できない場合、又は16か月以降育児に当たる予定であった配偶者(かつその子の親)が、死亡、負傷、疾病等の一定の事情により子を養育することが困難になった場合

  ② 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する従業員に対して、(子の看護休暇、年次有給休暇等別途法で認められている休暇以外に)育児に関する目的で利用できる休暇(例えば、配偶者出産休暇や、入園式、卒園式などの行事参加も含めた育児にも利用できる多目的休暇など)を与えるための措置を講ずる事業主の努力義務が追加された

(2)育児・介護両方に関わるもの

   従業員もしくは配偶者が妊娠・出産したこと、又は従業員が対象家族を介護していることを知ったときに、関連する制度(休業中の待遇や休業後の労働条件等)について個別に知らせるための措置を講ずる事業主の努力義務が追加された


3 規程への法改正の内容反映の必要性

  平成29年改正法の(1)②(育児目的休暇の付与措置)・(2)(個別周知の措置)については努力義務にとどまりますので、このような制度を設けていなかったからといって直ちに違法となるものではありませんが、それ以外については改正内容に反する取り扱いは違法となってしまいます。

  御社の規程には、これらの改正内容が反映されていますでしょうか。もし必要でしたら、当事務所でも規程の改正案の作成等お手伝いをさせていただきますので、お気軽にご相談いただければと思います。

以 上


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# by tenma-lo | 2018-04-04 12:22 | 労働

法律実務セミナーを開催しました。

 こんにちは。3月14日、エル・おおさかにて当事務所主催の法律実務セミナーを開催しました。

「ケース事例から考える ローパフォーマー社員の労働問題」

というテーマで約2時間、会社の経営者・人事労務担当者、社会保険労務士の方々向けに
パネルディスカッション形式でお話をさせていただきました。
 37名の方々にご出席いただき、盛況のうちにセミナーを催すことができました。
ご出席いただきました皆様、誠にありがとうございました。


(セミナーで使用したレジュメ)

(講師陣(左から、吉田、前川、福崎、酒井))

 今回、副題に「雇入れ、雇用期間中、解雇、退職にまつわる諸問題」とつけたように、
雇用契約の成立(採用)から終了(退職)まで一気通貫で、しかも具体的なケース事例を見ながら
法的問題点を検討していくという形にしました。
 具体的な案件のイメージを持ちながら横断的に法律問題を確認していただけたのではないかと思います。

 セミナー後の懇親会でもセミナーで取り上げなかった論点や各社の経験談を情報交換することができ、我々弁護士にとっても大変勉強になりました。

 今後も人事労務の現場でご活躍されている皆さまに有益な情報を提供できるようなセミナーを実施していきたいと思います。

(弁護士 福崎浩)


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# by tenma-lo | 2018-03-15 15:02

裁量労働制の議論に思う

1 「働き方改革」推進関連法案の中から企画業務型裁量労働制の対象業務を広げる内容の法案が削除された。厚労省の実態調査をやり直したのちに、労政審で再度議論して再提出する方向ということだが、是非しっかりと議論をし直して、必要な修正も加えて提出しなおしてほしい。

  杜撰な調査結果がクローズアップされて、あるべき裁量労働制に関する建設的な議論がなされなかったことは、大変残念だ。

2 報道によると、野村不動産は、その社員1900人のうち600人に企画業務型裁量労働制を違法に適用していたことを理由に労働局から社長が呼び出しを受け特別指導、是正勧告を受けたとされている。社員の一人が長時間労働が原因で過労死し、労災認定を受けたことが契機になったようだが、もともと労働省告示の指針でも、この事例のような個別営業業務は企画業務型裁量労働制の対象業務ではないとされている。

  裁量労働制について、実際の裁判になる例は少ないのだが、これまでも専門業務型裁量労働制の対象業務である「情報処理システムの分析又は設計の業務」に当たらないとされた平成大阪高判24 727日〔エーディーディー事件〕、税理士資格を持たない者による税理士補助業務が専門業務型裁量労働制の対象業務である「税理士業務」には当たらないとされた東京高判平成26 227日事件〔レガシィほか事件〕等、法の対象業務には当たらないとされた裁判例が出されている。特に前者の〔エーディーディー事件〕は、裁量労働制に求められる業務遂行上の裁量の余地が、タイトな納期を設定していたことや、専門業務型裁量労働制の対象業務に当たらないプログラミングについて未達が生じるほどのノルマを設定していたこと、また営業活動にも従事させていたことなどを理由に対象行政を否定している点は運用上も重視しなければならない点だろう。

3 裁量労働制のもとに、健康管理のための労働時間把握や医師の面接指導が適切に行われないまま、極めて長時間の時間外労働が行われている実態も一部では指摘されており、それを改めるための方策の審議と法案再提出を期待したい。

  その際に、本来機能しなければならない過半数労働者との労使協定(専門職型)や労使委員会決議(企画業務型)が有効に機能していない点も直視し、改善策を検討すべきだろう。なお、京都地判平成29 427日は、労使協定が適法に選出された過半数代表によって締結されていない点及び就業規則も周知されているとはいえない点等をあげて、専門業務型裁量労働制の適用を否定している。

  過労死の発生したNHKの記者に対する専門業務型裁量労働制について、みなし労働時間が適切ではないとして、労基署から指導されたと報道されている。

4 新たな規制を含め改善を要する点は多いだろうが、一方で工場の労働者とは異なる、働き方に裁量の余地が広い労働者については、より広く裁量労働制の適用を考えるべきと思う。今後の建設的な議論を期待したい。

(吉田肇)



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# by tenma-lo | 2018-03-11 17:00