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身元保証人に対する損害賠償請求が制限された例(大阪地裁平成30年3月29日)

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こんにちは。最近暖かくなってきましたね。花粉の季節でもありマスクをつけている人も多くなってきました。皆さんは大丈夫ですか?


さて、今日は、従業員が違法に会社に与えた損害金について、身元保証人に請求したところ、身元保証人の責任が制限されたという裁判例を紹介します。




【事案の概要】


被告1は、塗装工事業等を事業とする原告会社に勤めていた元従業員であり、当時は工事監理係りであった。

被告1は、原告会社に在籍中、


①資材等をX社の業務とは無関係の個人的な利用に供して自己の利益を図る目的で発注
②工具を転売目的で発注

③取引先に納品代金を水増請求させ、水増し分相当額を当該取引先からY1名義の銀行口座に振込送金させる


ことにより、原告会社に合計約875万円の損害を与え、これについて、原告は被告1の元妻と従業員の子に対して身元保証契約に基づき保証債務履行請求を行った。




【判旨】


「被告1は管理係りとして・・・(取引先)に対する発注をする立場を利用して、自己の利益を図るために不正な発注や水増し請求を繰り返していたもので、その期間は平成2410月頃から平成273月頃までの相当長期間に及び、その不正行為の回数も多数回に及んでいるものであって、このような長期間にわたって不正が発覚しなかった一因として、原告において、請求書の内訳等の内容に誤りがないかと他の従業員が確認することなく、購入した物品の授受についても担当者に一任するなど、管理体制に相応の不備があったというべきであり、その結果、このように損害額が高額に及んでいることに鑑みれば、身元保証ニ関スル法律5条の規定に照らし、・・・身元保証人としての責任については、損害額の3割とするのを相当と認める。」





【裁判例からの学び】


1 会社の管理体制不備が理由に身元保証人に対する請求が制限される


身元保証ニ関スル法律は余りなじみがないかもしれませんが、身元保証人の責任や身元保証契約の効力について規定している法律です。



身元保証ニ関スル法律 5条

 裁判所ハ身元保証人ノ損害賠償ノ責任及其ノ金額ヲ定ムルニ付被用者ノ監督ニ関スル使用者ノ過失ノ有無、身元保証人ガ身元保証ヲ為スニ至リタル事由及之ヲ為スニ当リ用ヰタル注意ノ程度、被用者ノ任務又ハ身上ノ変化其ノ他一切ノ事情ヲ斟酌ス



本裁判例は、上記条文の「被用者の監督に関する使用者の過失の有無」の点を重視し、身元保証人の責任を損害額の3割に留めています。
会社としては、普段から十分な管理体制を整えることにより、従業員が不正行為を抑止予防する仕組みづくりが必要なことは言うまでもありませんが、そのような体制が不十分だと、不正行為を防止できないばかりか、身元保証人に対する請求についても制限されてしまうので要注意です。



2 202041日からは極度額を定めなければ無効


民法改正との関係では個人根保証契約(個人が保証人となり不特定の債務を保証する契約)の場合、極度額(保証人の責任の限度額)を定めなければ無効となりますので注意して下さい。
いくら身元保証契約書を用意しようとも、契約書に責任の限度額の記載がない場合は、身元保証契約が無効となり、身元保証人に対する請求もできなくなってしまいます。
今のうちから身元保証契約書には、
責任の限度額を入れておきましょう。


                                      以上


                              (弁護士 前川宙貴)




# by tenma-lo | 2019-03-19 14:19 | 労働

法律実務セミナー『中小企業のための「働き方改革関連法」』を開催しました。


こんにちは。平成30年11月28日、ドーンセンターにて当事務所主催の法律実務セミナー『中小企業のための「働き方改革関連法」』を開催いたしました。


経営者・人事労務担当者の方を中心に約40名の方にご参加いただきました。皆様、お忙しい中ご参加いただき誠にありがとうございました。


ご存じのとおり、働き方改革関連法は平成30年6月に国会成立し、来年4月以降順次施行されます。一部の規定は中小企業への適用が猶予されるなど経過措置が設けられているものの、いずれ中小企業にも改正法が適用されることとなります。


本セミナー前半では、長時間労働の是正(時間外労働の上限規制、年次有給休暇の時季指定義務、医師の面接指導及び労働時間管理等)に関わる労働基準法や労働安全衛生法の改正点をご説明しました。また、セミナーの後半では、いわゆる同一労働同一賃金に関するパートタイム・有期雇用労働法(労働契約法20条が、パートタイム労働法に移設され新しくできた法律)について、法改正前の最高裁判例(長澤運輸事件、ハマキョウレックス事件)も踏まえた今後の展望についてご説明しました。


セミナー後の茶話会でも法改正後の実務的な運用についての疑問点やご意見など、充実した意見交換をすることができました。


今後も人事労務の現場でご活躍されている皆さまに有益な情報を提供できるようなセミナーを実施していきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。


(弁護士 福崎浩)









# by tenma-lo | 2018-11-30 12:09 | 労働

「長時間労働の是正」のための「年次有給休暇を年5日は実際に与える義務」

はじめに

前々回は、平成30年6月29日に成立した、働き方改革関連法の改正の概要とその施行時期をご紹介し、前回は、「長時間労働の是正」のための「時間外労働の上限規制の導入」をご紹介しました。今回は、「長時間労働の是正」のための「年次有給休暇を年5日は実際に与える義務」他を取り上げたいと思います。


1 年次有給休暇を年5日は実際に与える義務

労働基準法が改正され、有給休暇のうち5日については、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならないとされました。有給取得率が高くない状況を改善することにより、長時間労働を是正することが狙いです。なお、義務が発生するのは有給日数が10日以上発生する従業員に限定されています。

施行時期は平成31年4月1日からですが、業務可視化による業務の効率化や副担当制等の導入により有給取得した従業員とは別の従業員でも業務が滞りなく行われるような対策を講じる等、有給休暇の取りやすい職場環境作りを今から始めてはいかがでしょうか。


2 月60時間を超える時間外労働の割増賃金率(5割以上)を中小企業にも適用

労働基準法上、1月あたり60時間を超える時間外労働については割増賃金率50%以上を支払う必要がありますが、これまで中小企業への適用は猶予されていました。ところが、今回、中小企業に対する猶予措置が廃止されます。これにより平成35年4月1日から、中小企業も、割増賃金率50%以上の支払義務が生じますので、これまで以上に時間外労働時間管理に注意を払う必要があります。


3 労働時間の状況把握義務

 労働安全衛生法66条の8が改正され、労働者の労働時間の状況を把握しなければならないものとされました(労働時間の状況把握義務)。労働安全衛生法上、長時間労働等の一定の要件を満たす従業員につき、事業主は医師による面接指導を行う義務がありますが、この面接指導を実施するために、厚生労働省令で定める方法により労働者の労働時間の状況を把握しなければなりません。方法については、使用者の現認や客観的方法によることが原則とされています。使用者の現認以外の方法としては、例えばICカードやタイムカードによる記録が考えられます。

 なお、施行日は、平成31年4月1日です。


以 上





# by tenma-lo | 2018-09-05 16:19 | 労働

働き方改革関連法案が成立しました


はじめに


平成30629日、働き方改革関連法案が成立しました。


   この法律は、時間外労働の上限規制の導入を始めとする今後の労務管理・企業経営に大きな影響を及ぼすことが予想される重要な内容を複数含んでいますが、(改正内容・企業規模等による例外はあるものの)基本的には平成3141日施行と、施行までの期間が非常に短くなっています。そのため、企業としてはその内容を速やかに把握した上で、対策を講じていく必要があります。


今回は、特に中小企業にとって影響が大きいと思われる「長時間労働の是正」及び「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」を目的とする改正の概要とその施行時期を、いわば目次的にご紹介したいと思います。これにより、まずは施行までのタイムスケジュール感を掴んでいただければと思います。



1 改正の概要とその施行時期


(1)長時間労働の是正


① 時間外労働の上限規制の導入


(施行日:平成3141日。ただし、中小企業は平成3241日より適用)


  ・原則45時間、年360時間以内


  ・通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的な必要がある場合でも、720時間単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間(休日労働含む)が限度(労使協定の定めが必要、この特例の適用は6か月以内に限られる)。


② 年次有給休暇を年5日は実際に与える義務(施行日:平成3141日)


 ・使用者は10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、5日※については、毎年時季を指定して与えなければならない


※労働者の時季指定や計画的付与により取得された日数分は控除可。


 ③ 月60時間を超える時間外労働の割増賃金率(5割以上)を中小企業にも適用(施行日:平成3541日)


 ④ 厚生労働省令で定める方法※による労働時間の状況把握義務(施行日:平成3141日)


  ※使用者の現認や客観的方法による把握を原則とする。



(2)雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保


  (①②いずれも施行日:平成3241日。ただし、中小企業への短時間・有期雇用労働法の適用は平成3341日)


 ① (正規雇用労働者との)不合理な待遇差を解消するための規定の整備


 ア 短時間・有期雇用労働者(短時間・雇用労働法)


・不合理な待遇の禁止


短時間労働者及び有期雇用労働者の、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、通常の労働者の待遇との間において、不合理※と認められる相違を設けてはならない


 ※不合理か否かは、ⅰ職務の内容、ⅱ職務の内容・配置の変更の範囲、ⅲその他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して判断する。


・職務の内容及び職務の内容・配置の変更の範囲が通常の労働者と同一短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止


 


イ 派遣労働者(労働者派遣法)


  派遣元事業主は、派遣労働者の待遇について次の㋐又は㋑のいずれかを確保しなければならない。


派遣先に雇用される通常の労働者の待遇との間において、不合理と認められる相違を設けてはならない※不合理か否かの判断要素はアと同じ。


 かつ


 ・職務の内容及び職務の内容・配置の変更の範囲派遣先に雇用される通常の労働者と同一の派遣労働者につき、当該通常の労働者の待遇に比して不利なものとしてはならない


一定の要件(同種業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額と同等以上の賃金の額となる賃金の決定方法等)を満たす労使協定による待遇



② 労働者に対する待遇の説明義務の強化


   短時間・有期雇用・派遣労働者につき、正規雇用労働者との待遇差の内容・理由等に関する説明義務化。


以上




# by tenma-lo | 2018-07-10 16:19 | 労働

「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会報告書」(平成30年3月)のご紹介

はじめに

今回は、平成30年3月に出された「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会報告書」を一部ご紹介いたします。

1 パワーハラスメントの現状

  都道府県労働局における職場のいじめ・嫌がらせに関する相談は増加傾向にあり、平成24年度以降、全ての相談の種別の中でトップとなっています(平成28年度は全体の相談件数の22.8%を占めています)。嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けたことによる精神障害の労災認定件数も増加傾向にあります。

  厚生労働省が実施した「平成28年度職場のパワーハラスメントに関する実態調査」(以下、「実態調査」といいます。)の結果によると、従業員向けの相談窓口で従業員から相談されたテーマのうちパワーハラスメントが32.4%と最も多く、過去3年間に1件以上パワーハラスメントに該当する相談を受けたと回答した企業は36.3%、過去3年間にパワーハラスメントを受けたことがあると回答した従業員は、32.5%にものぼります。

  実態調査の結果によると、パワーハラスメントの予防・解決に向けた取り組を実施している企業は52.2%となっていますが、規模別にみると、従業員1000人以上の企業の実施率が88.4%である一方、従業員99人以下の企業の実施率は26.0%と、企業規模が小さくなると実施率も低くなっています。

  このように、パワーハラスメントの問題は社会的な問題となっている一方で、中小企業では十分な対策が行われていないのが実情となっています。


2 職場のパワーハラスメントの概念

  職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場の優位性(※1)を背景に、業務の適正な範囲(※2)を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう。

  ※1 上司から部下に行われるものだけではなく、先輩・後輩間や同僚間などの様々な優位性を背景に行われるものも含まれる。

  ※2 個人の受け取り方によっては、業務上必要な指示や注意・指導を不満に感じたりする場合でも、これらが業務上の適正な範囲で行われている場合には、パワーハラスメントには当たらない。

  職場のパワーハラスメントの行為類型としては、以下の6つの類型が挙げられています(これら以外の行為は問題ないという趣旨ではない旨留保されています)。

 ⅰ 暴行・傷害(身体的な攻撃)

 ⅱ 脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)

 ⅲ 隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)

 ⅳ 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)

 ⅴ 業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)

 ⅵ 私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)


3 事業主が講ずる対応策として考えられるもの

 ①事業主の方針等の明確化、周知・啓発

 ・社内報、HP等にパワーハラスメントの内容、パワーハラスメントがあってはならない旨の方針を記載し配布

 ・研修、講習の実施等

 ・就業規則等において、パワーハラスメントを行った者に対する懲戒規定を定める等

 ②相談等に適切に対応するために必要な体制の整備

 ・相談窓口の設置

 ・相談窓口の担当者が相談を受けた場合、留意点などを記載したマニュアルに基づき対応すること等

 ③事後の迅速・適切な対応

 ・事実関係の迅速・正確な確認

 ・被害者と行為者を引き離すための配転等

 ④上記の対応と併せて行う対応

 ・相談者・行為者等のプライバシーの保護

 ・労働者が職場のパワーハラスメントに関し相談をしたことや事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取り扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知すること


4 ご案内

  パワーハラスメントの具体例、発生時の対応策、予防策等については、7月18日(水)開催の弊所のセミナーでも紹介させていただく予定ですので、是非ご参加いただけたらと思います。

以 上



# by tenma-lo | 2018-06-04 12:08 | 労働